2023年2月、上野動物園のシャンシャンなど、日本の動物園にいたジャイアントパンダ4頭が中国に返還され、大きなニュースになりました。
なぜ日本の動物園で暮らしていたパンダたちが中国に返還されたのでしょうか?パンダの返還に関して、何かルールがあるのでしょうか?
この記事では、パンダの返還に関するルールを分かりやすくまとめて解説します!
パンダの返還ルールまとめ
ルール①:日本で生まれたパンダを含めて、すべてのパンダを返還しなければならない
実は日本にいるすべてのパンダの所有権は中国にあります。
中国に所有権があるのは、中国で生まれて日本にやってきたパンダだけでなく、日本で生まれ育ったパンダについても同じです。
今、日本の動物園にパンダがいるのは中国から一時的に「レンタル」しているから。借りているので、いつか返さなければいけない日がやってきます。
ルール②:協定で定めた貸し出し期限が来たら返還しなければならない
では具体的にいつ返還しなければいけないのでしょうか?
パンダの返還時期は、中国からパンダを受け入れる際に、中国野生動物保護協会と結ぶ協定の中でパンダごとに決められます。
協定で決められたレンタル期限がやってきたら、原則的にはパンダを中国に返還しなければいけません。
また、日本で赤ちゃんパンダが生まれた場合は、誕生後に中国側との協議のもとで返還時期が決定されます。
ルール③:中国生まれで日本にやってきたパンダの貸し出し期間は5~10年くらい
中国からやってきたパンダの貸し出し期間は、5年・10年などの数年単位でのレンタルが多いようです。
例えば、上野動物園のリーリー・シンシンの当初のレンタル期間は、2011年2月から2021年2月までの10年間でした。(その後5年間の延長が決定し、現在の返還期限は2026年2月になっています。)
中国からパンダを輸送するのには、時間やお金などさまざまなコストがかかりますし、パンダにとっても大きなストレスになります。また、新しい環境にパンダが慣れるのにもそれなりに時間がかかります。
そういう事情もあって、数か月単位の短い期間でレンタルされることは基本的にはありません。
ルール④:日本生まれのパンダの返還期限は原則「生後24カ月」
日本で誕生したパンダの返還期限については、「生後24カ月」(=満2歳)と規定されています。
ただ、そこまで厳密に24カ月ルールが運用されているわけではなく、2歳ぐらいになったころに中国側と協議を開始して返還時期が決まり、実際に返還されるのは3~4歳を超えてからになることもあります。
ルール⑤:返還の時期は状況に応じて変更・延期されることがある
「一度決めた返還期限はゼッタイ!」ということもなく、返還の時期は状況に応じて変更・延期されることもあります。
例えば、神戸市立王子動物園のタンタンは、持病の心臓病の治療と新型コロナウイルス流行の影響によって、返還期限が何度も延期されています。
返還に関するルールが決まっているのはなぜ?
ここまで読んでいただいて、返還に関するルールがいくつもあることが分かっていただけたと思いますが、なぜこのようなルールが定められているのでしょうか?
パンダの返還ルールは、パンダの保護活動と密接に結びついています。
例えば、パンダは絶滅の恐れの高い希少動物として、ワシントン条約で国際取引が禁止されています。中国から他国に所有権を譲渡することは「取引」にあたるため、期限を定めて世界各国の動物園に貸し出す形を取っているのです。
また、貸し出し先の動物園で生まれたパンダは、その国で繁殖を行おうとするとパートナーの選択肢が非常に少なくなってしまいます。
繫殖適齢期(だいたい3~4歳以降)に個体数の多い中国でパートナー探しができるように、子どものパンダは2歳ごろに返還されることになっています。
パンダを返還する理由はこちらの記事でも詳しくまとめているのでぜひご覧ください!
返還ルールに基づいて日本から中国に返還されたパンダたち
直近だと2023年2月に日本から複数のパンダが返還されました。
返還されたのは、上野動物園のシャンシャン、和歌山アドベンチャーワールドの永明(えいめい)・桜浜(おうひん)・桃浜(とうひん)の4頭です。
シャンシャンは2017年に上野動物園で生まれたパンダ。もともとは満3歳の2020年12月末までに返還される予定でしたが、新型コロナウイルス等の影響で返還期限が2年以上伸び、満5歳での返還となりました。
シャンシャンは現在、中国ジャイアントパンダ保護研究センターの雅安碧峰峡基地(があんへきほうきょうきち)で暮らしています。
また、永明・桜浜・桃浜は中国に返還後、成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地で暮らしています。
日本から返還された4頭のパンダが暮らしているジャイアントパンダ保護研究センターについては、こちらの記事でまとめています。