白黒でムクムクしたかわいい姿で世界中の人々から愛されているジャイアントパンダ。
動物園の人気者ですが、実は絶滅の危機に瀕している「絶滅危惧種」に指定されていた時期もありました。
この記事では、ジャイアントパンダの最新の絶滅危惧レベルや絶滅危惧種になった理由、そして私たちにできることを分かりやすく解説します。
パンダは絶滅危惧種?最新の分類とこれまでの経緯

ジャイアントパンダは現在、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「危急種(Vulnerable=VU)」に分類されています。
これは、「絶滅の危険が増大している種」を意味します。
また、以前は「絶滅危惧種(Endangered=EN)」という、より深刻なランクに位置づけられていました。
パンダが絶滅危惧種に指定され、その後解除に至るまでの経緯について詳しく見ていくとともに、同じ「パンダ」の名前を持つレッサーパンダの絶滅危惧レベルとも比較していきます。
ジャイアントパンダの絶滅危惧レベル
ジャイアントパンダは生息地の減少や分断などといった様々な理由で生息数を減らし、「絶滅のおそれがある」として1990年に国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されました。
また、ジャイアントパンダの生息地である中国の独自評価でも絶滅危惧種に指定され、国家を挙げて保護・保全活動が続けられてきました。
その後、保護活動の成果が確認できたため、2016年にIUCNの絶滅危惧種(EN)指定が解除され、危急種(Vulnerable)に変わりました。
2021年には中国独自のレッドリストでも危機レベル引き下げられました。
直近の調査では、野生のジャイアントパンダの個体数はおよそ1,864頭と推定されていて、1,000頭近くまで減少した1988年と比較すると2倍近くまで生息数が増えています。

調査年 | 1977年 | 1988年 | 2003年 | 2014年 |
生息数 | 2,459頭 | 1,144頭 | 約1,600頭 | 1,864頭 |
*参考:「パンダを野生に」中国で一大プロジェクト 生き抜く訓練に1頭あたり年2200万円 絶滅危機から個体数は回復:東京新聞デジタル
*調査年については、上野動物園園内の立て看板「野生での生息状況は?」も参考にしています
*参考:IUCN Red List of Threatened Species
*参考:パンダ、脱「絶滅危惧」 個体数倍増でもぬぐえぬ不安 – 日本経済新聞
レッサーパンダの絶滅危惧レベル
パンダと同じように中国に生息し、笹や竹を食べる動物にレッサーパンダがいます。
レッサーパンダはIUCNレッドリストで「絶滅危惧種(EN)」に分類されており、実はジャイアントパンダよりも絶滅の危険性が高いとされています。
*参考:IUCN Red List of Threatened Species
「絶滅危惧種解除」というキーワードについて
インターネット上では、「パンダ 絶滅危惧種 解除」といったキーワードを目にすることがありますが、これは正確な表現ではありません。
「解除」という言葉は、絶滅の危機が完全に去ったような印象を与えますが、ジャイアントパンダの状況は、個体数が増加傾向にあるとはいえ、依然として「危急種」に分類されていて保護が必要な状態です。
パンダが絶滅危惧種になった理由

ここからはパンダの生息数が減少し、絶滅危惧種に指定されることになった原因について詳しく解説します。
パンダが絶滅危惧種になった背景には、これから紹介する理由をはじめとする複数の要因が複雑に絡み合っています。
理由1:生息地の破壊
ジャイアントパンダは、中国南西部(四川省など)の山岳地帯の竹林に生息していますが、森林伐採や農地開発、道路建設などにより、生息地が大幅に減少してしまいました。
また、生息地が減少しただけでなく「分断」されたこともパンダの生息状況に大きな影響を与えています。
生息地の分断とは、道路建設などによって生息地が小規模なエリアに区切られてしまい、動物がエリアをまたいで移動することができなくなっている状態です。
生息地が分断されることで、えさの確保が難しくなったり、近親交配が進みやすくなって遺伝的な多様性が失われたりして、環境変化への適応力や繁殖力が低下する可能性が懸念されています。
理由2:食糧問題
パンダの主食は笹や竹ですが、竹は30~120年に一度、一斉に開花し枯死するという特殊な性質を持っています。
竹が枯れるとパンダの食べ物がなくなってしまいます。
かつては、枯死していない他の竹林へ移動することで乗り越えられる場合もありましたが、上で解説した生息地の分断によりパンダの移動が妨げられ、えさが十分に確保できないおそれがあります。
実際に、1970年代半ばに竹の一斉開花・一斉枯死が発生したときには、餓死するパンダが数多く発生したそうです。
また、地球温暖化などの気候変動によって竹林の分布が変化する可能性があり、パンダの食糧問題がさらに深刻化することも心配されています。
理由3:過去の狩猟や現在の密猟
1980年代以前には、ジャイアントパンダは毛皮などを目的とした狩猟の対象となっていました。
1989年に中国政府が「中華人民共和国野生動物保護法」を施行し、パンダを「国家一級重点保護野生動物」に指定して、捕獲・殺害・売買を全面的に禁じましたが、現在も密猟が完全になくなったとはいえません。
理由4:パンダ自身の性質
理由1~3で紹介した外的要因に加えて、ジャイアントパンダ自体が持つ性質も生息数の減少の一因になっています。
ジャイアントパンダは、他の動物と比較すると繁殖力が低い動物です。
メスの発情期は年に一度の数日間しかなく、出産できる子供の数も通常1~2頭と少ないことがパンダの個体数が増えにくい要因の一つとなっています。
他にも、地球温暖化による生息地のさらなる減少や、竹林の分布変化など、パンダの生存を脅かす様々な問題が現在も心配されています。
パンダを守るための保護活動

パンダの絶滅を防ぐため、中国政府や国際的な保護団体は、様々な活動に取り組んでいます。
これまでの保護活動が実を結び、パンダの絶滅危惧レベルは「危急種」に引き下げられ、野生での生息数を増加させることができています。
パンダの保護活動がどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
中国政府による取り組み
中国政府は、パンダの保護活動において中心的な役割を担っています。
1960年代からパンダの生息地に保護区を設け、森林の伐採や開発が行われないように保護してきました。
現在では、67カ所以上の保護区が設立され、パンダの生息地の85%以上が保護されているそうです。
また、飼育下で生まれたパンダを自然に戻すための「野生復帰プログラム」も実施されています。
このプログラムでは、保護研究センターで生まれたパンダが野生での生活に必要なスキルを身につけるための訓練が行われ、パンダの個体数増加に貢献することが期待されています。
さらに、中国政府は、世界各地の動物園や研究期間と協力し、飼育下繁殖にも力を入れています。
これらの取り組みにより、パンダの繁殖成功率を高め、絶滅の危機から救うための努力が続けられています。
国際的な協力
ジャイアントパンダの保護は、中国国内だけでなく、国際的な協力体制のもとで進められています。
世界自然保護基金(WWF)などの国際的な保護団体は、中国政府と連携し、保護区の管理や調査、地域住民への啓発活動など、多岐にわたる活動を支援しています。
また、各国の研究機関が協力し、パンダの生態や遺伝に関する研究を推進しています。
これらの研究は、パンダの保護戦略を策定する上で貴重な情報を提供しています。
さらに、ジャイアントパンダは、ワシントン条約によって国際的な商業取引が禁止されており、国際社会全体で保護に取り組む体制が整えられています。
パンダの保護のために私たちにできること

パンダを保護するために国際的な活動が行われていることが分かりましたが、私たち一人ひとりに何かできることはないのでしょうか?
パンダの保護活動に個人としてできる貢献を考えてみましょう。
個人でできる支援
ジャイアントパンダの保護は、遠い中国だけの問題ではありません。
私たち一人ひとりも、日々の生活の中で、パンダを守るための行動を起こすことができます。
例えば、WWFなどの保護団体や動物園の保護プログラムに寄付することで、保護区の運営や調査活動など、パンダの保護活動を直接的に支援することができます。
また、環境に配慮した消費行動を心がけることも重要で、例えばFSC認証(森林管理協議会による認証)を受けた製品を選ぶことで森林伐採を抑制し、パンダの生息地を守ることにつながります。
パンダグッズの中には収益の一部がパンダの保護活動に使われるものもあるので、「買い物をする」ことも保護活動に参加する一つの手段です。
色々書きましたが、まずはパンダの現状や保護活動について「知る」ことが保護活動のとても大事な第一歩だと思います。
動物園で本物のパンダを観察して生態を学んだり、友人や家族に話したり、SNSで情報を共有したりすることが、保護活動への関心を高めることにつながるからです。
まとめ:パンダの未来のために、私たち一人ひとりができること
ジャイアントパンダは、保護活動の成果もあって絶滅危惧種ではなくなりました。
しかし、彼らの未来は決して安泰ではありません。
私たち一人ひとりが、パンダの現状を正しく理解し、できることから行動を始めることが、ジャイアントパンダ、そして地球全体の自然を守ることにつながります。