「動物園のパンダがいつもゴロゴロ寝てばかり…」
「パンダって、もしかして夜行性だから昼間は動かないのかな?」
動物園にパンダを見に行ったときに、そんな風に思ったことはありませんか?
人気者のジャイアントパンダですが、その活動時間については意外と知られていないことが多いようです。
実は、パンダは夜行性ではありません。また最近の研究からは、パンダが夜行性にも昼行性にも分類されない独自の生活リズムで暮らしていることも明らかになってきています。
この記事では、パンダが夜行性だと誤解されやすいのはなぜなのか、パンダの本当の活動パターン、「寝てばかり」に見える理由などを分かりやすく解説します。
さらに、動物園で活発なパンダを見るためのポイントもご紹介します。
この記事を読めば、パンダの生態についてもっと詳しくなって、動物園でのパンダ観察がさらに楽しくなるはずです。
- パンダが「夜行性」なのか、「昼行性」なのか
- パンダがどのような活動パターンで生活しているのか
- なぜパンダは寝てばかりいる(ように見える)のか
- 動物園で活発なパンダを見るためのポイント
- レッサーパンダとの活動時間の違い(おまけ)
「パンダは夜行性」は間違い!本当の活動時間は?
記事の冒頭から「パンダは夜行性ではない」とお伝えしましたが、「夜行性じゃないってことは昼行性?」など新たな疑問が湧いたのではないでしょうか?
ここでは、パンダを飼育する動物園の公式サイトの情報や科学的調査といった信頼性の高い情報を参照しながら、パンダの活動パターンの真相に迫ります。
まず結論:パンダは「夜行性」でも「昼行性」でもない!
最初に結論をお伝えすると、ジャイアントパンダは夜行性でも昼行性でもありません。
動物園では昼間にぐっすり寝ている姿を見かけることも多いので、「夜に活動するのでは?」と誤解されることもありますが、実際には昼間も活動します。
日本で最も多くのパンダの飼育実績がある和歌山県のアドベンチャーワールドも、パンダの活動パターンについて以下のように明言しています。
★ジャイアントパンダは昼行性?夜行性…?
*参考:ウィンターナイトはパンダも夜更かし?ジャイアントパンダ 運動場にて夜まで公開!|トピックス|アドベンチャーワールド
答えはどちらもNO! 1日のうち約三分の二の時間を寝て過ごすジャイアントパンダは、昼も夜も寝起きを繰り返す動物です。
では、パンダは一体どんな活動パターンを持っているのでしょうか?
それを理解するために、まずは動物の基本的な活動タイプについて知っておきましょう。
参考:動物の活動時間のタイプについて
そもそも、「『夜行性』『昼行性』の定義とは」「他にも種類はあるのか」など、動物の活動時間のタイプに関する基本的な情報をご紹介します!
動物の活動時間は、主に以下の3つのタイプに分けられます。
- 昼行性(Diurnal): 主に昼間に活動するタイプ。人間、多くの鳥類、サル、リスなど。
- 夜行性(Nocturnal): 主に夜間に活動するタイプ。フクロウ、コウモリ、タヌキなど。
- 薄明薄暮性(Crepuscular): 主に明け方(薄明)と夕暮れ(薄暮)の薄暗い時間帯に活動するタイプ。ウサギ、シカなど。
ここで「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」という第3のタイプが登場しましたね。
「夜行性」や「昼行性」と比べると聞きなれないワードですが、夜行性でも昼行性でもないパンダは薄明薄暮性の動物ということなのでしょうか?
再び結論:単純な型にはまらない「パンダ独自の活動パターン」
パンダは従来、明け方と夕方に主に活動する「薄明薄暮性」に分類されると考えられてきました。
ですが、近年のGPSなどを用いた詳細な研究によって、パンダの活動パターンは単純な「薄明薄暮性」とは言えない、ユニークなものであることが分かってきました。
例えば、アメリカのミシガン州立大学の研究チームが行った調査では、野生のパンダ5頭の行動を追跡した結果、パンダには1日の中で朝・午後・深夜の3回活動のピークがあることが明らかになりました。
つまり、薄明薄暮性の特徴である朝夕の活動に加えて、深夜にも活発になる時間帯があるということです。
この研究チームのメンバーは、「パンダを単純に薄明薄暮性の生き物とは言えない(We cannot simply say the panda is a crepuscular creature.)」と結論付けています。
このことから、パンダは「夜行性」でも「昼行性」でも「薄明薄暮性」でもない独自の活動パターンを持っていると言えるでしょう。
朝・昼・夜を問わず、短い活動と休息(睡眠)を繰り返しながら、1日の中で特に活発になる時間帯が3回ある。それがジャイアントパンダ独自のライフスタイルなのです。
この生活リズムは一体なぜ生まれたのでしょうか?次からは、その理由をパンダの食生活から探っていきたいと思います。
*参考:Pandas set their own pace, tracking reveals | Michigan State University
なぜパンダは1日中寝たり起きたりを繰り返すの?食生活との深い関係

ここまで見てきたように、パンダは朝・昼・夜を問わず1日中寝起きを繰り返して活動する動物ですが、これには、パンダの主食である「笹・竹」との深い関係があると考えられています。
パンダがこのような生活スタイルを送っている理由を詳しく見ていきましょう!
理由1:パンダのユニークな活動リズムと食生活の関係
パンダといえば、笹や竹をもりもり食べている姿を思い浮かべますよね。
実は、この笹や竹、栄養価が非常に低いのです。
特に、動物が生きていく上で重要なタンパク質やカロリーが乏しいという特徴があります。
そのため、パンダは生きていくために必要な栄養を摂取するために、1日20~30kgもの大量の笹や竹を食べ続けなければなりません。
さらにパンダはもともと肉食動物に近い体のつくりをしており、植物の繊維を効率よく消化するのが苦手。
食べた笹や竹のうち、実際に栄養として吸収できるのはわずか20%程度で、残りの80%はほとんど消化されずにそのまま排出されてしまうと言われています。
このように大量に竹を食べる食生活ゆえに朝昼夜を問わずに活動(=食事)する必要がある、というのがパンダの独特な生活スタイルの一因になっているのです。
*参考:和歌山アドベンチャーワールド 未来のSmile応援プロジェクト
*参考:Q5:ジャイアントパンダはどうしてタケ・ササを食べるようになったの?|上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト「UENO-PANDA.JP」
理由2:食べては休み、また食べる。「ちょこちょこ活動」が生存戦略
「低栄養」で「消化しにくい」笹や竹を主食とするパンダ。
どうやって生き延びてきたのでしょうか?その答えが、「省エネ」です。
パンダは、エネルギー消費を極力抑えるために、短い活動(主に食事)と短い休息(睡眠)を1日の中で何度も繰り返すという生活スタイルを選びました。
人間のように長時間活動し続けるのではなく、「お腹が空いたら起きて食べる → 疲れたら寝る → また起きて食べる…」というサイクルを繰り返すのです。
この「食べては休み、また食べる」というこまめな活動と休息の繰り返しが、結果的に1日の中で朝・昼・夜に3つの活動ピークを生み出したと考えられています。
低燃費な食生活に適応するための、パンダならではの生存戦略と言えるでしょう。
理由3:天敵が少ないから?自由なライフスタイル
パンダがこのような独特な活動パターンをとれるようになった背景には、天敵が少ないことも関係しているかもしれません。
野生の大人のパンダには天敵がほとんどいません(子どものパンダはテンやイタチなどに狙われることがあります)。
そのため、他の多くの動物のように、特定の時間帯に天敵から隠れたり、活動を制限したりする必要性が低いのです。
昼でも夜でも天敵の存在をあまり気にせず、自分のペースで活動したり休んだりできる「自由度の高さ」も、パンダ独自の活動リズムを形作る一因となった可能性があります。
*参考:ジャイアントパンダとは – 生態や形態の特徴解説 – ZUKAN(図鑑)
「食べる→寝る」を繰り返すパンダの睡眠時間はどれくらい?

「食べては休み、また食べる」というサイクルを繰り返すパンダは、一日にどれくらい眠っているのでしょうか?
パンダの睡眠時間は1日10~16時間ほどと言われています。
私たち人間の平均睡眠時間(約7~8時間)と比べてだいぶ長いことに加えて、短い(数時間程度)睡眠を1日に何度もとるために、動物園などでは「寝てばかりいる」という印象を持たれやすいみたいです。
パンダは夜中にも活動するため、昼間に睡眠をとるのはごく自然なこと。
「怠けている」のではなく、パンダらしく暮らしているだけなので優しく見守ってあげてくださいね。
動物園で活動的なパンダに会いたい!狙い目時間とコツ
寝ている姿もかわいいとはいえ、せっかく動物園に行くからには元気に動いているパンダを見たいという気持ちもとてもよく分かります!
ここまで学んできたパンダの活動パターンを踏まえつつ、動物園で起きているパンダを見るためのポイントをご紹介します!
一番のねらい目は朝(開園直後)!
起きているパンダを見られる可能性が最も高いのは、ずばり朝(開園直後)の時間帯です!
開園時間の直前に竹の補充が行われ、パンダが朝ごはんを食べている可能性が高いためです。
開園直後の時間帯以外は、その日の食事時間・睡眠時間によって変わるため予測がしにくく、運の要素が強くなってしまう感覚があります。
また、パンダは本来は涼しい場所に生息する生き物なので、夏よりも冬のほうが活発に動き回る姿に会える可能性が高まるかもしれません。
*参考:Giant Panda FAQs | Smithsonian's National Zoo and Conservation Biology Institute
日本の動物園のパンダ情報(上野・和歌山)
現在、日本でパンダを飼育している動物園は、上野動物園(東京)とアドベンチャーワールド(和歌山)の2か所だけです。
また、アドベンチャーワールドで飼育中のパンダ4頭は2025年6月末頃に中国に返還されることが発表されており、返還後は上野動物園が日本で唯一パンダを飼育する動物園になる見込みです。
それぞれの動物園についてもおすすめの時間帯をまとめておきます。
上野動物園(東京)
上野動物園にパンダを見に行く場合、おすすめの時間帯はやはり朝(開園直後)です。
開園時間は9:30なので少しだけ早めに行って開園を待ち、開園したら真っ先にパンダ舎を目指すのがベストです。
開園直後の時間帯をおすすめする理由は以下のとおりです。
- パンダが朝ごはん中の可能性が高い。
- パンダ観覧のために並ぶ必要があるが、開園直後は比較的待ち時間が短い。
※2025年5月13日から、オスのシャオシャオに限って並ばずに観覧できるようになりました。(2025年5月7日追記) - 観覧時間に制限(1頭あたり2~3分程度)があり、パンダが起きているかどうかは運の要素が強い。朝から並ぶことで1日2回以上並べる可能性が高まる。
パンダ観覧の待ち時間は日によって変わりますが、土日の晴れた日であれば30分以上の待ち時間も珍しくありません。
また、長時間並んでも実際にパンダを見られる時間はほんの数分なので、「起きてたらラッキー」ぐらいの気持ちで並ぶのがいいと思います。(寝姿もかわいいですよ!)
展示時間や観覧方法等は変更になる可能性があるので、公式の情報をご確認ください。
▶ジャイアントパンダの観覧方法の変更について | 東京ズーネット
アドベンチャーワールド(和歌山)
アドベンチャーワールドは、通常であれば待ち時間や観覧時間の制限なくパンダを見ることができます。
そのため、「おすすめの時間帯」というよりは、パンダの色々な姿を1日中観察できる本当に夢のような動物園でした。
ですが、パンダ返還の発表後は上野動物園と同じように待ち時間が発生しているようなので、やはり混雑を避けやすい開園直後などがおすすめかもしれません。
これから6月末の返還の日(正式な日程は未発表)が近づくにつれて、ますます混雑することが予想されます。
「返還前に一目でも会いたい」気持ちで何とか時間を作って駆けつけた人も多いと思うので、お互いに優しく譲り合いながら観覧できたらいいですね。
おまけ:レッサーパンダの活動時間は?ジャイアントパンダとの違い
最後にジャイアントパンダと同じ「パンダ仲間」の「レッサーパンダ」の活動時間についても簡単に触れておきます。
調べた限りでは、レッサーパンダの活動パターンも明確に分類が定まっていないようでした。
例えば、札幌市円山動物園はレッサーパンダを夜行性の動物として紹介しています。
一方、静岡市立日本平動物園は薄明薄暮性の動物だと言っています。
ジャイアントパンダの活動パターンとは異なるものの、レッサーパンダもまた独自の生活リズムを持っているみたいです。
ちなみに、ジャイアントパンダは「クマ科」、レッサーパンダは「レッサーパンダ科」に分類されていて、名前は似ていても分類上は遠い存在とされています。
まとめ:パンダ独自の活動リズムを知って、もっと観察を楽しもう!
今回は「パンダは夜行性なの?」という疑問から出発して、ジャイアントパンダのユニークな活動パターンとその理由、動物園での観察のポイントまで詳しく解説してきました。
- ジャイアントパンダは夜行性でも昼行性でも薄明薄暮性でもない独自の活動パターンを持つ。
- 笹・竹を大量に食べるため、短い活動と睡眠を繰り返す独自の省エネ生活を確立した。
- 動物園で活発なパンダを見たいなら朝(開園直後)がおすすめ。
「パンダは寝てばかり」に見えるのは、彼らが生きるために編み出した賢い戦略の一つだということが分かりました。
ユニークな生態を知って、動物園でパンダを見る目が少し変わったのではないでしょうか?
のんびり笹を食べている姿も、気持ちよさそうに寝ている姿も、たまに見せる活発な姿も、すべてがパンダの魅力です。
ぜひ、パンダの活動リズムを意識しながら、その愛らしい姿をじっくり観察してみてくださいね!