日本では動物園でしか見ることのないジャイアントパンダですが、れっきとした野生動物です。
野生のパンダは、中国の山奥の竹林で、1日の半分以上を竹を食べて過ごし、群れを作らず単独で暮らしています。
動物園で見るのんびりした姿からは想像しにくいですが、季節ごとに食べる竹を選び分け、広い森を歩き回るたくましい動物です。
この記事では、野生のパンダの食べ物・1日の過ごし方・縄張り・繁殖と子育て・寿命・天敵・性格など、生態をまとめて解説します。
また、野生のパンダと動物園のパンダの違いも表にまとめて比較しました。
野生のパンダはどこで暮らしている?
野生のジャイアントパンダの生息地は、中国の四川省(しせんしょう)・陝西省(せんせいしょう)・甘粛省(かんしゅくしょう)にまたがる、標高約1,300〜3,500メートルの山岳地帯の森林です。
夏は涼しく冬は雪が積もるほど寒い、主食の竹がよく育つ湿潤な山の森が、パンダのすみかになっています。
野生のパンダの数は、中国政府の第4回全国調査で1,864頭、近年の政府発表では1,900頭近くとされています。
1970〜80年代に生息数が激減しましたが、保護活動によって回復傾向にあり、2016年には国際自然保護連合(IUCN)の危機レベルが「絶滅危惧種」から「危急種」に引き下げられました。
野生のパンダの生態の秘密
ここからは、野生のジャイアントパンダがどんなふうに暮らしているのか、その生態に迫っていきます。
動物園のパンダからは、のんびりとした印象を受ける人も多いと思いますが、野生のパンダは厳しい山の環境に合わせた、独特の暮らし方をしています。
野生のパンダの食べ物は何?
野生のパンダの食べ物は、ほとんどが竹や笹です。
葉・茎・タケノコなどを食べていて、食事の99%を竹や笹が占めるといわれています。
竹は栄養が少なく、パンダは消化するのも得意ではないため、1日に10〜20kg前後もの竹を食べます。
水分の多いタケノコの季節には、さらにたくさんの量を食べることもあります。
また、野生のパンダは季節や場所によって、食べる竹の種類や部位を食べ分けています。
春から初夏はやわらかいタケノコ、夏は葉、冬は茎や葉、というように、その時期に最も栄養がとれるものを選んで食べているそうです。
豆知識として、パンダはもともとクマの仲間で、雑食の動物です。
そのため野生では、ごくまれに小動物(ネズミや鳥など)や昆虫、果実などを食べることもあるそうです。
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1日の過ごし方:食べて寝るのくり返し
野生のパンダの1日は、「食べる」と「寝る」のくり返しです。
栄養の少ない竹で体を保つために、1日のうち10時間以上を食事に費やしているといわれています。
食事の合間には、木の根元や岩かげなどで数時間ずつ眠って体を休めます。
昼と夜の区別はあまりなく、朝や夕方に活発に動きながら、昼夜を問わず食事と休息を何度もくり返しているのが特徴です。
竹から得られるエネルギーは少ないため、パンダはできるだけ動き回らず、エネルギーを節約するように暮らしています。
動物園のパンダがよく寝ているように見えるのも、実はこの省エネの暮らし方に理由があるんです。
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群れを作らず単独で行動する
野生のパンダは群れを作らず、繁殖期以外は単独で行動します。
それぞれが自分の行動範囲を持っていて、竹林の中を歩き回りながら暮らしています。
ほかのパンダとの接触を避けるために、パンダは木の幹や岩に尿やおしりの分泌物をこすりつけてマーキングをします。
このにおいで「ここに自分がいる」「自分はオス(メス)だ」といった情報をほかのパンダに伝えているのです。
オスのパンダは逆立ちをしてできるだけ高い位置にマーキングすることがあります。
高い場所ににおいをつけることで、自分の体を大きく見せる効果があると考えられています。
ちなみに、動物園でパンダどうしが仲良く遊んでいる姿を見たことがあるかもしれませんが、それは子ども時代に限った話です。
子どものパンダは生後1年半〜2年ほどお母さんと一緒に過ごし、その後は親離れして単独で暮らすようになります。
繁殖と子育て:繁殖力が低い動物
パンダは、繁殖力が低い動物として知られています。
メスの発情期は年に1回、春ごろのわずか数日間しかなく、このタイミングを逃すとその年は妊娠できません。
発情期になると、単独で暮らしていたオスとメスが鳴き声やにおいで相手を探し、出会うとペアになります。
出産は夏の終わりから秋ごろで、生まれたばかりの赤ちゃんは体重わずか100〜200gほど。お母さんの体重の約1,000分の1~500分の1という、とても小さな姿で生まれてきます。
一度に生まれる子どもは1頭か2頭ですが、野生で双子が生まれた場合、お母さんが育てられるのは基本的にどちらか1頭だけです。
もう1頭は育たずに死んでしまうことが多いといわれています。
このように、生まれる数が少なく、子育てにも長い時間がかかることが、パンダの数が増えにくい理由のひとつになっています。
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寿命は15〜20年くらい
野生のパンダの寿命は、約15〜20年と考えられています。
一方、動物園など飼育下のパンダは20〜30年ほど生きることも多く、30歳を超える長寿のパンダもいます。
飼育下のパンダが長生きするのは、栄養管理や健康管理が行き届いていること、病気やけがの際にすぐに治療を受けられることなどが理由です。
野生では、食べ物不足や病気、けがなどが命に直結してしまいます。
また、パンダの1歳は人間の約3歳に相当するといわれています。
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天敵はほとんどいない?
大人のパンダは体重が100kg前後にもなる大きな動物で、力も強いため、大人のパンダを襲う天敵はほとんどいません。
パンダが暮らす山奥の森には、大人のパンダをねらうような大型の肉食動物がほとんどいないのです。
ただし、体の小さい子どものパンダは、ヒョウやドール、テンの仲間などに襲われることがあります。
お母さんが食事のために子どもをそばに置いて離れたすきに、ねらわれてしまうこともあるそうです。
とはいえ野生のパンダにとっては、天敵よりも生息地の減少や分断、竹の一斉枯死による食べ物不足のほうが、ずっと大きな脅威といえます。
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性格は穏やか。でも怒らせると危険
野生のパンダの性格は、基本的には穏やかです。
警戒心が強く、人間の気配を感じると自分から離れていくことがほとんどで、積極的に人を襲うことはまれです。
ですが、パンダはクマの仲間で、硬い竹をかみ砕く強いあごと鋭い爪を持っています。
縄張り意識も強く、発情期にはオスどうしが激しく争うこともあります。
中国では、村に迷い込んだ野生のパンダに近づいた人がかまれてけがをした例もあり、不用意に近づくのはとても危険です。
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クマの仲間なのに冬眠しない
パンダはクマ科の動物ですが、ほかの多くのクマと違って冬眠をしません。
冬のあいだも起きて活動し、雪の積もった森で竹を食べ続けています。
冬眠しない理由は、主食の竹が冬でも手に入ることと、栄養の少ない竹が主食のため冬眠に必要な脂肪を体にたっぷり蓄えにくいことだと考えられています。
寒い冬は、雪の少ない低い場所へ移動して過ごし、厚い毛皮で寒さから身を守っています。
野生のパンダと動物園のパンダの違い
同じジャイアントパンダでも、野生と動物園では暮らし方がかなり違います。
ここまで紹介してきた野生のパンダの生態をもとに、動物園のパンダとの主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 野生のパンダ | 動物園のパンダ |
|---|---|---|
| 食べ物 | 自分で竹を探し、季節ごとに種類や部位を食べ分ける | 飼育員が用意した竹や笹に加え、パンダ団子・果物・野菜なども食べる |
| 行動範囲 | 広い山の森を歩き回る | 運動場と室内の限られた範囲 |
| ほかのパンダとの関わり | 繁殖期以外は単独で暮らす | 基本は1頭ずつ。親子や若い個体どうしで一緒に過ごすこともある |
| 子育て | 双子の場合、育てられるのは基本的に1頭だけ | 飼育員のサポートで双子を2頭とも育てられることが多い |
| 寿命 | 約15〜20年 | 約20〜30年(30歳を超えることも) |
| 天敵 | 子どもはヒョウなどに襲われることがある | なし |
特に大きな違いは、食べ物を自分で探す必要があるかどうかです。
野生のパンダは広い森を移動しながら、その季節に一番おいしい竹を選び分けています。
動物園のパンダが竹のにおいをかいで、食べるものを選んでいる姿にも、その名残が見られます。
また、動物園では飼育員が赤ちゃんを交代で保育器に預かるなどして、双子を2頭とも育てることができます。
野生では難しいことも、飼育下の繁殖技術によって実現できるようになっているのです。
まとめ
野生のジャイアントパンダは、中国の山奥の竹林で、1日の半分以上を竹を食べて過ごし、群れを作らず単独で暮らしている動物です。
季節ごとに竹を食べ分け、においで仲間と情報をやりとりしながら、厳しい山の環境に合わせてたくましく生きています。
一方で、発情期は年に1回数日だけ、野生の双子は1頭しか育たないなど、繁殖力が低く数が増えにくい動物でもあります。
保護活動によって生息数は回復傾向にありますが、生息地の分断や気候変動など、パンダを取り巻く課題はまだ残っています。
パンダの未来を守るためには、中国政府や保護団体の活動に加えて、私たち一人ひとりがパンダの生態や現状に関心を持つことが大切です。

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