日本では動物園でしか見ることがないジャイアントパンダですが、れっきとした野生動物です。
でも、野生のパンダがどこで、どのように暮らしているか、詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか?
この記事では、野生のジャイアントパンダの生息地、生息数、生態(食べ物や子育てなど)、そして彼らが直面している危機や保護活動について、詳しく解説します。
野生のパンダはどこにいる?
ジャイアントパンダは野生動物ですが、生息地も限られているため、出会えるチャンスはほとんどありません。
野生のジャイアントパンダがどこにいるのか、生息地の情報をまとめました。
野生のパンダの生息地は中国の限られた地域だけ
野生のジャイアントパンダは、中国南西部の四川省(しせんしょう)、陝西省(せんせいしょう)、甘粛省(かんしゅくしょう)の山岳地帯にのみ分布しています。
具体的には、岷山(みんざん)山地、邛崍(きょうらい)山地、秦嶺(しんれい)山脈などの、標高1,200~3,400メートルの地域です。
*引用元:パンダの生態と、迫る危機について |WWFジャパン
野生のジャイアントパンダは中国にしか生息しておらず、中国以外の国や地域で野生のパンダを見ることはできません。
野生のパンダの生息環境
パンダの生息地には、以下のような地理的・気候的特徴があります。
パンダの生息地は、竹林が広がる、冷涼な気候の山岳地帯です。
冬には厳しい寒さがやってきて雪が積もることもあります。
パンダは天敵から逃れるためにこの厳しい環境を生息地に選び、厚い毛皮や竹を主食とする特殊な食生活に適応することで、生存競争を勝ち抜いてきたと考えられています。
野生パンダの生息数は何頭?最新情報をチェック
野生のジャイアントパンダは中国の限られた地域だけに生息していることが分かりました。
それでは、野生のパンダの生息数は何頭ぐらいなのでしょうか?
最新の生息数と過去から現在に至るまでの推移を見ていきましょう。
【最新】野生のパンダの生息数:約1,864頭
野生のジャイアントパンダの生息数は、約1,864頭と推定されています。(2015年、中国国家林業局発表)これが確認できた最新の生息数ですが、10年ほど前の情報なので現在はもう少し増えているかもしれません。
私たち人間が世界に約80億人いることを考えると、2,000頭弱という生息数がいかに少ないか想像しやすいのではないでしょうか?
実際、ジャイアントパンダは現在、絶滅の危険性がある生き物として国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「危急種(Vulnerable=VU)」に指定されていて、様々な保護活動の取り組みが行われています。
- レッドリストは、絶滅のおそれがある生き物のリスト。
- 生き物の種類ごとに、絶滅の危険度に応じて「絶滅危惧種(Endangered=EN)」「危急種(Vulnerable=VU)」などのレベル分けがされている。
- 国際自然保護連合(IUCN)のような国際団体が定めたものや、各国が独自に作成したものがある。
*参考:その数1,864頭 ジャイアントパンダの最新の推定個体数 |WWFジャパン
野生のパンダの生息数の推移(グラフ)

調査年 | 1977年 | 1988年 | 2003年 | 2014年 |
生息数 | 2,459頭 | 1,144頭 | 約1,600頭 | 1,864頭 |
*参考:上野動物園園内の立て看板「野生での生息状況は?」
*参考:パンダ「絶滅危惧種」解除は正当か、専門家に聞く | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
グラフの数字を一つずつひも解いていきましょう。
- ~1980年代生息数が激減
1977年には2,500頭近く生息していたが、生息地の破壊・分断などの影響を大きく受けて、約10年間で半数以下の1,144頭まで激減。
- 1990年絶滅危惧種に指定
生息数の激減を受けて、絶滅の危険性が高く保護が必要な動物として、国際自然保護連合(IUCN)から「絶滅危惧種(Endangered=EN)」に指定。
- ~2010年代生息数が徐々に回復
中国政府や世界自然保護基金(WWF)などによる保護活動が実を結び始め、野生での生息数が再び増加傾向に。
- 2016年絶滅危惧種指定の「解除」
生息数が増加したため、絶滅危惧レベルを「絶滅危惧種(Endangered)」から「危急種(Vulnerable)」に1段階引き下げ。
パンダの生息数は回復傾向にありますが、それでもまだ1977年の水準には至っていません。
生息地の減少や分断など、パンダを取り巻く状況は依然として厳しく、継続的な保護活動が必要とされています。
飼育下のパンダの数
世界各国の動物園や保護センターなどで飼育されているパンダの頭数は2024年11月時点で757頭と発表されています。
9割以上は中国国内で飼育されていますが、その他20か国以上の動物園で中国からレンタルしたパンダを飼育しています。
また、日本では2025年現在、上野動物園(東京都)とアドベンチャーワールド(和歌山県)の2か所で合計6頭のジャイアントパンダを飼育しています。
施設名 | 所在地 | 今いるパンダ | 歴代パンダ | 誕生したパンダ |
---|---|---|---|---|
上野動物園 | 東京都 | 2頭 | 14頭 | 6頭 |
アドベンチャーワールド | 和歌山県 | 4頭 | 20頭 | 17頭 |


野生のパンダを取り巻く状況
野生のジャイアントパンダの生息数のグラフから、1980年代までに個体数が激減して絶滅の危機にさらされたこと、1990年代以降はゆるやかに個体数が回復傾向にあることがお分かりいただけたのではないかと思います。
それでは、なぜ野生のパンダの生息数にこのような変化が起きたのか、その要因をより詳しく見ていきたいと思います。
その背景には、パンダの生息地をめぐる問題と、保護活動の歴史がありました。
パンダの生息数を脅かす要因
生息数が減少した背景には、以下のような要因が複合的に絡み合っています。
- 生息地の破壊:森林伐採や農地開発などにより、パンダの生息地である竹林が減少。
- 生息地の分断:道路やダムの建設などにより、パンダの生息地が分断され、えさの確保や繁殖のための個体群の移動が妨げられた。
- 竹の枯死による食糧難:主食である竹が30~120年に一度一斉に枯死する性質の影響で、一時的に食糧不足に陥った。
- 密猟:毛皮や肉を目的とした密猟が行われていた。(現在は厳しく禁止されている)
- 繁殖力の低さ:発情期が短い、一度に生む子の数が少ないなどの理由で個体数が増えにくい。
このような原因で生息数の減少が急速に進行した結果、1990年には「野生で非常に高い絶滅のリスクに直面している」として、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種(EN=危機)に指定されることになったのです。
パンダ保護活動の歴史と成果
パンダの生息数減少を受け、中国政府や世界自然保護基金(WWF)がパンダの保護に懸命に取り組んできました。
具体的な保護活動の内容には、以下のようなものがあります。
- 保護区の設置:パンダの生息地に保護区を設け、森林伐採や開発を制限。現在では、67カ所258万ヘクタール以上の保護区が設立され、パンダの生息地の85%以上をカバーしている。(主な自然保護区:四川省の臥龍(がりゅう)自然保護区/王朗(おうろう)自然保護区など)
- 「緑の回廊」づくり:分断されたエリアどうしを竹林で再びつなぎ合わせて個体群間の交流を促す。
- 野生復帰プログラム:飼育下で生まれたパンダに野生化訓練を行い、野生に返す取り組み。
- 繁殖方法の研究:世界各地の動物園と協力し、飼育下での繁殖技術を向上。
- 国際的な協力:WWF(世界自然保護基金)などの国際的な保護団体と連携し、調査や保護活動を実施。
- ワシントン条約:ワシントン条約によって国際的な商業取引を禁止。
これらの保護活動の結果、野生のパンダの生息数は徐々に回復し、2016年には絶滅危惧レベルが「絶滅危惧種(Endangered)」から「危急種(Vulnerable)」に引き下げられました。
*参考:飼育されているパンダの数が世界で757頭に 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
*参考:知ろう守ろうジャイアントパンダ|恩賜上野動物園
*参考:ワシントン条約の概要|環境省
野生のパンダの生態の秘密
ここからは、野生のジャイアントパンダがどんなふうに暮らしているのか、その生態に迫っていきたいと思います。
動物園のパンダからは、なんとなくのんびりとした印象を受ける人も多いと思いますが、動物園のパンダと野生のパンダには何か違いがあるのでしょうか?
厳しい生息環境に置かれながらも、力強く生きる野生のパンダの姿を知っていただければと思います。
野生のパンダの食べ物は何?
野生のパンダは、主に笹や竹の葉、茎、タケノコを食べています。
笹・竹を主食とするのは、野生のパンダも動物園のパンダも同じですが、野生のパンダは季節や生息地によって、食べる笹の種類を変えて、その時その場所でもっとも栄養豊富な竹を食べ分けているそうです。
また、野生のパンダが食べるものは、笹だけではありません。
稀にですが、小動物(ネズミ、鳥など)や昆虫、果実などを食べることもあります。
実は、パンダは雑食動物に分類されていて、笹や竹だけでなく色々な食べ物を消化することができるのです。
*参考:ジャイアントパンダの基礎知識|仙台市公式ホームページ
*参考:パンダの基礎知識 | 日本パンダ保護協会
*参考:ジャイアントパンダについて|上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト「UENO-PANDA.JP」
単独行動する生き物
野生のパンダは群れを作らず、繁殖期以外は単独で行動します。
自分の縄張りを持っており、木の幹に尿や分泌物でマーキングをすることで、他のパンダとの接触を避けています。
動物園でパンダどうしが仲良く遊んでいる姿を見たことがあるかもしれませんが、あれは子ども時代に限った話です。
子どものパンダは生後1~2歳くらいまでお母さんパンダと過ごし、その後ひとり立ちして単独で生活するようになります。
*参考:ジャイアントパンダの基礎知識|仙台市公式ホームページ
繁殖力が低い生き物
パンダは、繁殖力が低いことでも知られています。
メスの発情期は年に一度、数日間しかなく、出産できる子供の数も通常1~2頭です。
また、野生で双子が生まれた場合、基本的に母親が育てるのはどちらか一方だけで、もう一方は死んでしまうことが多いそうです。
こうした繁殖力の低さもパンダの生息数が増えにくい要因の一つになっています。
*参考:ジャイアントパンダの基礎知識|仙台市公式ホームページ
寿命は15~20年くらい
野生のパンダの寿命は、約15~20年と考えられています。
一方、動物園など飼育下のパンダは、約25~30年生きることも多いです。
飼育下のパンダは、普段から栄養管理・健康管理が徹底されていることや、病気や怪我の際に治療を受けられることなどから、野生のパンダよりも長生きする傾向があるようです。
また、パンダの1歳は人間の3歳分くらいに相当します。つまり、パンダは人間の約3倍の早さで年を取るということです。


*参考:ジャイアントパンダの基礎知識|仙台市公式ホームページ
天敵がほとんどいない
パンダは、天敵の少ない場所で生活するために、笹や竹を主食とする特殊な食生活に適応する進化を遂げた生き物です。
そのため、パンダの生息地周辺にはパンダの天敵となるような大型の肉食動物(ヒョウ、ドール、ヒグマなど)はほとんどいません。
ただし、体の小さい幼獣はテンやイタチなどに襲われることがあります。
*参考:Q5:ジャイアントパンダはどうしてタケ・ササを食べるようになったの?|上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト「UENO-PANDA.JP」
*参考:ジャイアントパンダとは – 生態や形態の特徴解説 – ZUKAN(図鑑)
性格
野生のパンダの性格は決して凶暴ではありまえん。動物園のパンダと同じように基本的には穏やかです。
しかし、縄張り意識が強く、発情期のオス同士は激しく争うこともあります。
人間を襲うことは稀ですが、不用意に近づくと危険な場合もあります。
*参考:「野良パンダ」にかまれた男性に賠償金1000万円、中国 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
*参考:野生パンダが激しい格闘、カメラが珍しい映像を撮影 中国|BBC News Japan(YouTube)
冬眠
パンダはクマ科の生き物ですが、クマと違って基本的に冬眠はしません。
これは、主食である笹が一年中手に入るため、冬眠してエネルギーを節約する必要がないからだと考えられています。
また、厚い毛皮を持っていることも、冬眠しない理由の一つかもしれません。
*参考:Q7:ジャイアントパンダは冬眠するの?|上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト「UENO-PANDA.JP」
【補足】野生のレッサーパンダの生息状況
ジャイアントパンダと同じ「パンダ」の名前を持つレッサーパンダですが、実は、ジャイアントパンダ以上に絶滅の危機に瀕しています。
IUCNのレッドリストでは、レッサーパンダはジャイアントパンダよりも絶滅危険度が高い「絶滅危惧種(Endangered)」に指定されており、野生の生息数は、2,500頭~10,000頭程度と推定されています。
レッサーパンダの生息地は、中国南部、インド、ネパール、ブータン、ミャンマーなどですが、森林伐採や開発、密猟などにより、生息数が減少しています。
まとめ:野生のパンダの未来を守るために
野生のジャイアントパンダは、世界中でも中国の限られた地域だけに生息するとても希少な動物です
一時は大きく生息数が減少し、絶滅の危険が高まりましたが、保護活動の成果もあり近年増加傾向になっています。
しかし、依然として絶滅の危機から脱したわけではなく、生息地の分断や気候変動など、パンダを取り巻く状況は厳しいままです。
パンダの未来を守るためには、中国政府や国際的な保護団体による保護活動の継続するだけでなく、私たち一人ひとりがパンダの生態や現状に関心を持ち、できることをに取り組むのが大事です。
例えば、
など、私たちにできることはたくさんあります。
私たち一人ひとりがパンダの現状を正しく理解し、できることに取り組むことが、ジャイアントパンダや地球全体の自然を守ることにつながります。