「パンダの指の数は何本?」と聞かれたら、なんと答えますか?
答えは、人間と同じ5本です。
ところがパンダの手には、5本の指とは別に「第6の指」「第7の指」と呼ばれる突起があり、「パンダの指は6本」「7本」といわれることもあります。
この記事では、パンダの手を写真で観察しながら、指の数と「第6の指」「第7の指」の正体を解説します。
さらに、化石から分かってきた「第6の指」の進化の歴史や、レッサーパンダ・クマの指との比較など、答えの「その先」まで深掘りしていきます!
写真で見てみよう!パンダの指の数
まずは実際に、ジャイアントパンダの手(前足)の写真を見て、何本指なのか確かめてみましょう。
こちらは、パンダが笹を持っている写真です。手に注目すると、指は何本に見えるでしょうか?

鋭い爪が5本見えますね。この写真だけを見ると、パンダは人間と同じ5本指のようです。
続いて、パンダの手を「手のひら」側から観察してみましょう。

手の上のほうに5つの肉球が並んでいるのに加えて、手首に近いところにも2つの突起があるのが分かります。
パンダの指は5本!6本・7本といわれる理由
写真で見つけた2つの突起は、「第6の指」「第7の指」と呼ばれています。
「第6の指」だけを数えると6本、「第7の指」まで数えると7本。これが、パンダの指の数が「6本」「7本」ともいわれる理由です。
では、なぜ7本ではなく「5本指」が正解なのでしょうか?ここからは、2つの突起の正体と、その突起が何のためにあるのかを順番に見ていきましょう。
実はこの2つの突起には、パンダの主食である竹と深い関係があります。指の数え方を知ると、パンダの手のひみつが見えてきますよ。
本当の指の数は「5本」

一般的に「指」とは、骨・筋肉・腱などでできていて、関節で曲げ伸ばしができる部分のことです。
この条件に当てはまるのは、上の図の①〜⑤の「ふつうの指」だけ。パンダの指は、前足も後ろ足も人間と同じ5本です。
一方、「第6の指」と「第7の指」は、指のように見えても関節で曲げることができません。そのため、本物の指としては数えないのです。
ちなみに、生まれて間もない赤ちゃんパンダの手にも、5本の指と2つの突起がちゃんとあります。小さな手でも、ちゃんと竹をつかむ準備ができているのですね。
「第6の指」「第7の指」の正体は手首の骨
「第6の指」「第7の指」の正体は、手首の骨が大きく発達して、こぶのように盛り上がったものです。
| 第6の指 | 親指側にある橈側種子骨(とうそくしゅしこつ)が大きくなったもの。「偽の親指」とも呼ばれる |
|---|---|
| 第7の指 | 小指側にある副手根骨(ふくしゅこんこつ)が大きくなったもの |
親指側の「第6の指」は、古くからよく知られていました。
一方の「第7の指」に注目したのは、日本の研究者です。
1999年、遠藤秀紀さん(現・東京大学教授)らの研究チームが、上野動物園で亡くなったフェイフェイの前足をCTスキャンで調べ、小指側の突起も竹をつかむのに重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
この研究がきっかけで、「パンダには7本目の指がある」と広く知られるようになったのです。
第6・第7の指で竹を上手にはさんでつかむ

「第6の指」「第7の指」は本物の指ではありませんが、パンダにとってはとても大切な役割を持っています。それが、主食の笹や竹をしっかりつかむことです。
クマの仲間の5本の指は、人間の親指のように向かい合わせに動かすことができません。
そこでパンダは、手首側の2つの突起を「支え」にして、5本の指との間に竹をはさみ込むようにしてつかんでいます。
上の写真でも、「第6の指」を人間の親指のように使って、硬い竹を器用につかんでいるのが分かりますね。
1日に何時間も竹を食べ続けるパンダにとって、なくてはならない道具なのです。
_panda-22-300x158.png)
指だけじゃない!パンダの手と足のひみつ
パンダの手(前足)と足(後ろ足)には、指のほかにも注目ポイントがあります。
| 爪 | どの指にも、鋭く曲がった爪がある。ネコのように引っ込めることはできず、木登りのときにスパイクのように役立つ |
|---|---|
| 肉球 | 手のひらと足の裏には、厚い肉球がある。「第6の指」「第7の指」の部分も、肉球のようにふくらんでいる |
| 後ろ足 | 後ろ足も5本指。クマの仲間と同じように、かかとまで地面につけて歩く |
のんびりしたイメージのパンダですが、鋭い爪を使って高い木にもスルスル登ります。
竹をつかむ前足と、体を支えて歩く後ろ足。前足は「食べるため」に特別な進化をとげていることが分かりますね。
「第6の指」はいつ、なぜできた?化石が語る進化
パンダの「第6の指」は、いつごろ、どのようにしてできたのでしょうか?
実は、この「偽の親指」は、生物の進化を考えるうえでとても有名な例です。最近では化石の発見によって、その進化の歴史も少しずつ分かってきました。
ここでは、パンダの祖先の化石から分かったことと、「第6の指」が進化論の有名なたとえ話になっている理由を紹介します。
なぜ本物の指のように長くならなかったのか、という意外な理由にも注目してください。
600万年前の祖先にも「第6の指」があった
2022年、中国の雲南省で見つかったパンダの祖先「アイルラルクトス(Ailurarctos)」の化石から、「第6の指」の骨が見つかりました。
この化石は、およそ600万年前のもの。これまでに見つかったなかで最も古い「第6の指」で、パンダの祖先がこのころにはもう竹を食べていたことを示す証拠と考えられています。
おもしろいのは、祖先の「第6の指」が今のパンダより長く、まっすぐだったことです。今のパンダの「第6の指」は、それより短く、先が内側に曲がった形をしています。
長く伸びなかったのは「歩くため」
竹をつかむだけなら、「第6の指」は長いほうが便利そうですよね。では、なぜ今のパンダの「第6の指」は短くなったのでしょうか?
研究チームは、その理由を「歩くときに体重を支えなければならないから」と考えています。
パンダは前足も地面につけて歩くので、「第6の指」の部分にも重い体重がかかります。長く伸びすぎると、歩くときにじゃまになってしまうのです。
「竹をつかむ」と「歩く」という2つの役割のバランスを取った結果が、今の短くて曲がった「第6の指」なのかもしれません。
進化論の名作エッセイ『パンダの親指』
パンダの「第6の指」は、アメリカの古生物学者スティーヴン・ジェイ・グールドのエッセイ『パンダの親指』(日本語版は早川書房)の題名にもなっています。
先ほど紹介したように、クマの仲間の親指は、他の指と向かい合わせに動かすことができません。
そこでパンダは、本物の親指を作り直すのではなく、手首にあった小さな骨を大きくして「親指の代わり」に使ったのです。
グールドは、生き物の進化は完璧な設計図どおりに進むのではなく、手元にある材料をうまく使い回して進むことの分かりやすい例として、パンダの「第6の指」を紹介しました。
レッサーパンダやクマの指の数と比べると?

最後に、パンダの手をほかの動物と比べてみましょう。
| 動物 | 分類 | 指の数 | 第6の指 | 第6の指の役割 |
|---|---|---|---|---|
| ジャイアントパンダ | クマ科 | 5本 | ある | 竹をつかむ |
| クマ | クマ科 | 5本 | ない | — |
| レッサーパンダ | レッサーパンダ科 | 5本 | ある | 木登り・竹をつかむ |
同じクマ科でも、ヒグマやツキノワグマには「第6の指」はありません。竹を主食にしているのは、クマ科のなかでもジャイアントパンダだけだからです。
一方、名前が似ているレッサーパンダには、ジャイアントパンダと同じように「第6の指」があります。
レッサーパンダとジャイアントパンダは、分類のうえでは遠い関係にある別の動物です。
それなのに、そっくりな「第6の指」を持っているのは、別々に進化して、たまたま同じような形になったからです。
このように、祖先の違う別々の動物が、似た暮らし方をするうちに、同じような形や体のしくみを持つようになることを「収斂進化(しゅうれんしんか)」といいます。
スペインで見つかったレッサーパンダの仲間の化石の研究から、レッサーパンダの「第6の指」は、もともと木登りのために発達したと考えられています。
竹をつかむのに使うようになったのは、その後のことです。
「第6の指がある」「竹を食べる」といった共通点から、かつては2種類のパンダを同じ「パンダ科」にまとめる考え方もありました。
_panda-21-300x158.png)
まとめ
パンダの指の数について、写真とともに詳しく見てきました。
パンダの指は、人間と同じ5本です。前足には、手首の骨が発達してできた「第6の指」「第7の指」があり、これを数えて「6本」「7本」といわれることもあります。
2つの突起は、5本の指と一緒に竹をはさんでつかむための大切な道具です。
「第6の指」は600万年前の祖先にもすでにあり、竹をつかむことと歩くことのバランスを取りながら、今の形になったと考えられています。
動物園でパンダが竹を食べている姿を見かけたら、ぜひ手元にも注目してみてください。
小さな「親指の代わり」が、600万年かけて受け継がれてきたと思うと、ますますパンダが愛おしくなりますね。

_panda-25.png)