ジャイアントパンダの大人は100kgほどにもなりますが、生まれたときは手のひらにのるほど小さなピンク色の赤ちゃんだということを知っていますか?
生まれたてのパンダの赤ちゃんは、お母さんのたった1,000分の1ほどの大きさで、毛もほとんど生えていません。白黒模様の大人パンダとは似ても似つかない見た目をしているのです。
そこから、1年もたたないうちに体重が100倍ほどになるまで、ぐんぐん成長していきます。
この記事では、パンダの妊娠期間から、生まれたての姿、親離れまでの成長の過程を、日本で生まれた赤ちゃんたちの記録とあわせて紹介します。
小さく生まれる理由や、双子の子育て、繁殖が難しいといわれる理由も合わせて解説します。
パンダの赤ちゃんの成長過程
パンダの赤ちゃんが生まれてから、お母さんのもとを離れるまでの成長の流れをまとめました。(成長過程は目安で、個体差があります。)
体重100〜200gで、毛はほとんどなく肌はピンク色。目はまだ見えない。
白黒の模様がはっきりしてきて、目が開き始める。
よちよち歩き始める。歯が生え始める。
外で遊ぶようになり、竹やタケノコを食べ始める。
お母さんから離れて、1頭で暮らし始める。
人間の赤ちゃんが首すわり、はいはい、ひとり歩きと進んでいくように、パンダの赤ちゃんにも成長の段階があります。
ここからは、パンダの妊娠から赤ちゃん誕生、親離れまで、実際の動画と一緒に詳しく見ていきましょう。
パンダの妊娠期間
パンダの妊娠期間は90〜180日と幅があり、平均は135日ほどです。
人間の妊娠期間はほぼ決まっていますが、パンダの場合は3か月で生まれることもあれば、6か月近くかかることもあるのです。
これほど幅があるのは、お腹の中の受精卵が、すぐには育ち始めないからです。
受精した卵子は、3〜5か月ほど成長を止めて待ってから子宮にくっつき、そこから約45〜50日で赤ちゃんが生まれます。
いわば、お腹の中で「一時停止ボタン」を押しているような状態です。このような状態を「着床遅延(ちゃくしょうちえん)」といいます。
- 受精卵が、すぐに子宮にくっつかず、しばらく成長を止めて待つしくみ
- パンダのほか、クマやアザラシの仲間などにも見られる
- なぜ起こるのかはまだはっきりわかっていないが、授乳に必要な食べ物が十分にある時期に出産できるよう、環境に合わせたしくみだと考えられている
パンダの繁殖期は1年に1回、おおむね2〜5月ごろ。そのうえ、メスが妊娠できるのはそのうちのたったの数日だけです。
野生では、夏の終わりから秋ごろに赤ちゃんが生まれることが多いです。
動物園ではホルモンや行動の変化を毎日調べていますが、妊娠していなくても妊娠したときと同じ変化が出る「偽妊娠」があるため、赤ちゃんが生まれるまで妊娠しているかわからないことも多いそうです。
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生まれたての赤ちゃん
生まれたばかりのパンダの赤ちゃんは、体重100〜200gほどで、お母さんの約1,000分の1の大きさしかありません。
毛はほとんど生えておらず、地肌のピンク色が見えていて、目もまだ開いていません。
下の動画は、アドベンチャーワールドで2020年11月22日に生まれた楓浜(ふうひん)の、生後1日の様子です(楓浜は今、中国で暮らしています)。
楓浜の生後1日の体重は150gで、お母さんの良浜(らうひん)の腕の中で、母乳を飲む姿も確認されています。
生まれてから約1か月のあいだ、お母さんは赤ちゃんの体温を保つために、ほとんどずっと抱っこして過ごします。
一般的に100gより小さく生まれた赤ちゃんは命の危険が大きいと言われていますが、アドベンチャーワールドでは、同園で最も小さい75gで生まれた彩浜(さいひん)が無事に成長した例もあります。
彩浜は小さすぎて自分で母乳を飲めなかったため、スタッフが母親の良浜からしぼった母乳を注射器で与え、保育器で温めて、24時間体制で支えました。
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生後1〜2か月ごろ
ピンク色だった赤ちゃんの体には、生まれて数日たつと、うっすらと白黒の模様が出てきます。
例えばアドベンチャーワールド生まれの結浜(ゆいひん)の場合、生後5日で白黒の模様が出始め、生後24日で体重が1kgを超えました。
下の動画は、結浜の誕生から生後79日の命名セレモニーまでの記録です(結浜は今、中国で暮らしています)。
目が開き始めたのは、生後45日のことです。
多くの赤ちゃんは、生後1〜2か月で目が開き始め、3か月ほどでしっかり見えるようになるといわれています。
動物園で生まれたパンダは、だいたいこれくらいの時期に保育器を卒業します。
このころには、生まれたときの10倍以上の重さになっていて、見た目もすっかり「小さなパンダ」らしくなります。
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生後3〜4か月ごろ
生後3〜4か月ごろになると、赤ちゃんパンダはよちよちと歩き始めます。
アドベンチャーワールドの例では、結浜が生後100日、楓浜が生後105日、彩浜が生後118日ほどで歩き始めたそうです。
下の動画は、生後118日の彩浜が歩いた日の様子です(彩浜は今、中国で暮らしています)。
歯もこのころに生え始め、結浜は生後95日で乳歯が生えました。
上野動物園のシャンシャンは、生後4か月で体重7.7kg・体長69.8cmになり、奥歯が生え始めて、竹や柵をかむようになりました。
歩けるようになると、動物園では一般公開に向けた準備も進みます。
楓浜は、歩き始めて5日後の生後110日に公開が始まりました。
下の動画は、楓浜が初めて歩いた瞬間です。
生後半年〜1年ごろ
生後半年をすぎると、赤ちゃんは外の運動場に出て、木登りや遊具で元気いっぱいに遊ぶようになります。
結浜は生後131日で屋内の運動場、生後187日で屋外の運動場にデビューしました。
下の動画は、結浜の2歳までの成長記録です。
生後245日には、大人と同じ永久歯が生え始めています。
そして生後285日で、体重は生まれたときの約100倍の19kgになりました。
生後305日には、離乳食を始めて、タケノコを食べられるようになりました。
この時期にはお母さんのお乳を飲みながら、少しずつ竹やタケノコの味も覚えていきます。
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1歳半〜2歳ごろ
パンダの子どもは、生まれてから1年半〜2年ほどをお母さんと一緒に過ごします。
そのあいだに、竹の食べ方や木の登り方など、生きていくために必要なことを覚えていくと考えられています。
そして親離れのときが来ると、お母さんのもとを離れて、1頭で暮らし始めます。
動物園では、1歳を過ぎたころに独り立ちすることもあります。
下の動画は、2022年4月14日、1歳4か月の楓浜が母親の良浜から離れて暮らし始めた日の様子です(楓浜は今、中国で暮らしています)。
群れを作らないパンダにとって、親離れは大人になるための大切な一歩です。
その後、パンダは野生で20年ほど、動物園などでは30年以上生きることもあります。
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パンダの赤ちゃんが小さく生まれる理由
体重100kgにもなるお母さんから、なぜ200gにも満たない小さな赤ちゃんが生まれるのでしょうか。
2019年に発表された研究では、パンダの赤ちゃんの骨を、ほかのクマなどの赤ちゃんとくらべました。
その結果、パンダの赤ちゃんの骨は、ほかのクマでいえば妊娠期間の7割ほどの段階にあたる、未熟な状態だとわかりました。
つまり、パンダの赤ちゃんは、どの子もみんな「早産」のような状態で生まれてくるのです。
なぜそうなるのかは、まだはっきりとはわかっていません。
受精した卵が子宮にくっついてから生まれるまでの期間が、約45〜50日と短いことが関係しているとも考えられています。
栄養の少ない竹を食べて暮らすお母さんが、お腹の中で赤ちゃんを大きく育てるのは大変なのかもしれません。
双子パンダ特有の子育て事情
パンダの赤ちゃんは、1回のお産で1頭か2頭生まれます。(中国の長隆では三つ子が生まれ、3頭とも育っています)
ところが、野生で双子が生まれた場合、お母さんが育てられるのは基本的にどちらか1頭だけです。
お母さんは赤ちゃんを抱っこして温め続けなければならず、2頭を同時に世話するのはとても難しいからだと考えられています。
そこで動物園では、「入れ替え保育」という方法で、双子を2頭とも育てています。
- お母さんが1頭を抱っこして育てているあいだ、もう1頭を飼育スタッフが保育器などで預かり、ときどき赤ちゃんを入れ替える方法。
- 2頭とも、お母さんのお乳とぬくもりをバランスよく受けて育つことができる。
2021年6月23日に上野動物園で双子が生まれたときも、お母さんのシンシンは出産直後から2頭を抱いていましたが、1頭を保育器に移しました。
その後は、1日おきに、シンシンが世話をする赤ちゃんと保育器の赤ちゃんを入れ替えて育てました。
下の動画は、生後2日の双子のシャオシャオとレイレイが入れ替えられる様子です(2頭は今、中国で暮らしています)。
一方で、入れ替え保育をせずに、お母さんが双子を2頭とも育てた例もあります。
アドベンチャーワールドの梅梅(めいめい)は、2003年9月8日に、日本で初めての双子となる隆浜(りゅうひん)と秋浜(しゅうひん)を産みました。
梅梅は、隆浜をしっかり抱いたまま秋浜を産み、その後も2頭ともしっかり抱いて育てたため、入れ替え保育はしなかったそうです。
お母さんが双子を2頭とも同時に育てたのは、飼育下では世界で初めての例として、国際会議でも報告されました。
お母さんがもともと持っている子育ての力と、それを見守るスタッフの判断があってこその例といえるでしょう。
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パンダの繁殖が難しいといわれる理由
パンダは、赤ちゃんが生まれにくく、数が増えにくい動物として知られています。
その理由を、ここまで見てきたことからまとめると、次のようになります。
- 妊娠できる日が少ない
恋の季節は年に1回で、メスが妊娠できるのはそのうちの数日だけ - 妊娠がわかりにくい
妊娠していなくても同じ変化が出る「偽妊娠」があり、生まれるまでわからないことも多い - 赤ちゃんがとても小さい
未熟な状態で生まれるため、育てるのに手がかかる - 双子は1頭しか育ちにくい
野生では、お母さんが育てられるのは基本的に1頭だけ - 子育ての期間が長い
1年半〜2年ほどお母さんと過ごすので、次の赤ちゃんまで間があく
ひとつのチャンスを逃すと、次の妊娠は1年後になってしまうので、動物園では恋の季節のパンダの様子を細かく見守っています。
こうした飼育下での繁殖技術が進歩したことで、かつては難しいとされていたパンダの繁殖が、安定して成功するようになってきました。
アドベンチャーワールドの良浜のように、10頭もの赤ちゃんを育てたお母さんもいます。
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まとめ
パンダの妊娠期間から、生まれたての姿、親離れまでの成長の過程を紹介しました。
パンダの妊娠期間は90〜180日と幅があり、着床遅延と呼ばれる現象が起こるのが特徴です。
赤ちゃんは100〜200gほどのピンク色の姿で生まれ、1年たたないうちに体重が100倍ほどにまで成長します。
双子の場合、野生では1頭しか育たないことが多いものの、動物園では入れ替え保育などで2頭とも育てられるようになりました。
小さく生まれた赤ちゃんが、お母さんとスタッフに見守られて大きくなっていく姿には、たくさんの努力と愛情が詰まっています。
パンダの赤ちゃんの記録や動画を見るときは、ぜひ成長の段階にも注目してみてください。

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